2013年10月15日火曜日

凶悪

★★★★☆

死刑囚の告発をもとに、雑誌ジャーナリストが未解決の殺人事件を暴いていく過程をつづったベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」(新潮45編集部編)を映画化。取材のため東京拘置所でヤクザの死刑囚・須藤と面会した雑誌ジャーナリストの藤井は、須藤が死刑判決を受けた事件のほかに、3つの殺人に関与しており、そのすべてに「先生」と呼ばれる首謀者がいるという告白を受ける。須藤は「先生」がのうのうと生きていることが許せず、藤井に「先生」の存在を記事にして世に暴くよう依頼。藤井が調査を進めると、やがて恐るべき凶悪事件の真相が明らかになっていく。ジャーナリストとしての使命感と狂気の間で揺れ動く藤井役を山田孝之、死刑囚・須藤をピエール瀧が演じ、「先生」役でリリー・フランキーが初の悪役に挑む。故・若松孝二監督に師事した白石和彌がメガホンをとった。http://eiga.com/movie/77879/より)

非常に高水準なクライムムービーにして、さまざまな要素で“真の善悪”を受け手に考えさせるよう巧みに作られた映画だ。
そして陰惨な事件が起きる現場の終末感しか感じさせないロケーションや、山田孝之から脇役のさらに脇役に至るまでハマりすぎているキャスティングが素晴らしい。ピエール瀧とリリー・フランキーの韓国映画の悪役にも引けを取らない「凶悪」ぷりといったら温和そうな顔でCMに出ている彼らを二度と信用できないほどのクォリティだ。

残忍な殺人方法と、それを直視する映像は実際に本編を観てもらうことにして、ここで取り上げたいのは次第に“正義”の名のもとに事件に異常な執着心を見せる山田孝之扮する藤井の常軌を逸した行動だ。認知症で時には暴力も振るいだす母の世話を妻に任せっきりで彼女の相談にも取り合わず、自分は仕事に付きっきり。挙句の果てには飛び切りの大ネタを追うのに必死になるあまり、警察に捕まってしまう。

面会(というか身元引受)に妻が現れ、彼とついにまともに話しあうシーンは、本作の“人間ドラマ”の側面としてはハイライトとなっている。
「この事件を追えば被害者の魂は救われるんだ!」と藤井は言う。だから俺が仕事に追われ、事件を追うことは正しいのだと。
しかし妻は「死んだ人の魂なんかどうでもいい。生きている私を救ってよ」と嘆く
(藤井は母を施設に預けてしまうことに負い目を感じており、妻の提案をうやむやにしてきていたのだ)。
社会正義の執行に酔っていた彼は、目の前の家庭の平穏すら守らず、逃げている。殺人者が悪だとしても、追う側の人間は必ずしも善とは言い切れない。単なる探偵ものにせず「善なる人間などいないのに、人が人を悪として裁いていいのか」という根源的なテーマにまで踏み込んでいる。

事件の行方も気になるところだが、藤井が自身の家庭にいかなる決断を下すのかも見ものだ。

ヴァイオレンスムービーファンも満足の(?)陰惨としか言いようのない犯罪シーンも当然見どころである。
しかし、見慣れている人ならむしろ受け入れられるような映像の作りになっているが、むしろ池脇千鶴演じる藤井の妻の介護疲れでドンづまっている演技の方がリアルでまったく笑えない。

そして、まるで高村薫の小説に出てくる剛田刑事ばりの泥臭い捜査で真相を突き止めるシーンの各所もさることながら、上記の「真の善悪」を問いかけられる最後のシーンの迫力たるやすさまじい。
ある人物(まぁ当然藤井なんだけど)がまるで法廷に立っている被告人のように見せる演出は、セリフと相まって見事としか言いようがない。
ノンフィクション部分の要素だけでは単なるクライムムービーだったが、藤井の家庭や心理なども抉り出すフィクション部分の味付けでゆるぎない傑作になったと思う(とか言ってるが原作未読のためどこまでがフィクション部分なのかは分かりませんので間違っていたらすみません)。

2013年10月14日月曜日

SNEEEZE 『ASYMMETRY』

★★★★

01. Intro (Pro.SNEEEZE)
02. Goodbye Bitch (Pro.CHRIS GR3EN)
03. I Go (Pro.TND)
04. S.G.H (Pro.The Beatzz)
05. Money Or Love (Pro.774 for DIGITAL NINJA RECORDS)
06. Dramatic (Pro.TDC)
07. Change (Pro.Jay Beatz)
08. Whale (Pro.Jay Beatz)
09. Say So (Pro.TND)
10. Skit -Wave- (Pro.SNEEEZE)
11. I'm In Night (Pro.PUNPEE)
12. Crying (Pro.Keybord Kid)
13. Outro (Pro.SNEEEZE)

ネット上で作品を発表し、一躍有名になった神戸のラッパー、SNEEEZEの初フィジカル作品。
2013年4月17日発売。

アルバム発売前から配信されていたM-2の出来栄えからアルバムの期待値は上がっていたが、リリースされた本作も期待を裏切ることのない作品だった。

スニーズは以前ネット上に発表していた作品はどちらかというとスケールの大きいテーマでラップしていた印象が強いが、本作はリリース直前にMVが発表されたM-9などからもわかるように身の回りの、特に恋愛をテーマにしたナイーブな曲が多い。地に足の着いた、というと語弊があるが聞く側も感情移入しやすく、彼の持ち味であるスムースなフロウも相まってサクッと聞きとおせる。

彼のフロウは一聴するとメロディアスだが、現行のUSの流れを汲んだ“抜き”が絶妙で日本語を崩さずに本場使用で歌い上げる技術、先人だとSIMON、同世代だとSALUなどがいるが彼らを凌駕していると個人的には思う。

どの曲も情景描写が巧みでM-2のサビのドラマティックさといったらない。
面倒くさがって別れた「Bitch」への解放感と未練が交差する矛盾した、しかし人間くさい内面を巧みに描いたバース部分も聞き逃せない。

一方で従来の「現状打破」系の曲であるM-3や7、未来を見据えた視点を深海を進むクジラにたとえたM-8も配信の時よりもスムースになったフロウを堪能できる。
本作は客演がいなかったが、セカンド以降は他のラッパーとのがあるのか、今後も期待したところだ。

M-7 “Say So”


M-2 “Good^bye Bitch”


2013年10月11日金曜日

CUTS DA COYOTE 『ESCAPE TO PARADISE』

★★★★★

01. INTRO- (pro.HIDEHISA)
02. WATER & OXY feat.JOYSTICKK, JAZEEMINOR (pro.DJBA)
03. ESCAPE TO PARADISE feat.BUGASUMMER (pro.DJBA)
04. ASH TO ASH DUST TO DUST feat.DJ LAW (pro.DJBA)
05. HANDS UP SNEAKERHEADS feat.CAZINO(LUCK-END), OHLI-DAY(ICE DYNASTY) (pro.HIDEHISA)
06. CAN NOT SEE MY WEED (pro.LIL'諭吉)
07. ラブホなう feat.TOP(THUGMINATI) (pro.MONBEE)
08. WOMEN LIE MEN LIE feat.MICHO (pro.LIL'諭吉)
09. SKIT
10. BUGATTI VIRUS (pro.DJ アチャカ)
11. エエエエエエエメラ! feat.EMERALD (pro.DJBA)
12. WILL YOU STAY feat.KOWICHI, NIYKE ROVINZ (pro.YUTO.COM)
13. LIFE IS GOOD feat. MARIN (pro.DJBA)
14. TAKE2 AND 回そう (pro.DJBA)
15. IMAGINATHION feat.DJ601 (pro.DJ601)

エメラルドの首謀者的存在(といつもプロフィールに載っている)であるカッツ・ダ・コヨーテのデビューアルバム。2013年7月10日発売。

個人的年間トップの傑作。僕自身こういった路線の作品を好きになる時が来るとは思わなかったが、まんまとハマった。このままだと本当に年間ベストのトップになるだろう。

Amebreakのインタビューを読むとかなりの下積みを積んでいるようだが、「(専門学生の時)ちょうど、MEGUMIがグラビアに出てた時期で、『でっかいオッパイ……でっかい世界……』みたいなよく分かんない発想で、BIG WORLDってグループを作って」や、「BIG WORLDの後にサムライフってグループを組んだ」(いずれも凄まじいネーミングセンスだ)などといった作品に内在している思考回路は以前から健全だったようで現在組んでいるエメラルドも、「周りのソロでやってたラッパーが、みんなユニットとかクルーを組み出して、そこで取り残された連中が『俺たちもなんか作った方がいいのかな』って組んだのがEMERALDという期待を裏切らない&一貫してブレない姿勢に感動した。

タイトルからも明らかなように本作はとことん快楽主義的な作品で、しかし決して内容は一人よがりではなくラップの向こうにリスナーがいることが意識されている。
その最たるものが先行シングルにもなったM-07だろう。

もはや流行りの言葉でも何でもない単語を曲名に持ってくる図太さもさることながら、実はDAB○の「降臨なう」よりも断然面白く聞かせてしまうセンスの良さ。この一周まわって最早フレッシュに聞かせてしまう感性が素晴らしい‼

ウェッサイの浮遊感を下地に、ひたすら楽園を求めてさまようかのようなカッツのラップは歌詞も聞き取りやすく、リスナーをありとあらゆる手段で陽気にさせようとする。
完全に旬を過ぎた姉妹が題材のM-06、クルーのポッセカットのはずなのにあまりにやる気の無さすぎるフックが逆に印象的なM-11など突っ込みどころ満載だがとにかく楽しく聞ける。

トラックのほとんどを手掛けたforte所属のDJBAも幅広いプロダクションもさることながら、アルバムのど真ん中を支えたLIL'諭吉も相変わらずいい仕事をしている。

程よく力の抜けるよう計算された、非常にクレバーなアルバム。



2013年10月9日水曜日

lyrical school 『date course』


★★★★

01. -drive-
02. そりゃ夏だ![作詞・作曲・編曲:tofubeats]
03. wow♪[作詞:ポチョムキン(from餓鬼レンジャー)/ 作・編曲:Fragment]
04. リボンをきゅっと[作詞・作曲・編曲:tofubeats]
05. 流れる時のように[作詞:呂布 / 作・編曲:ハシダカズマ(箱庭の室内楽)]
06. PARADE[作詞・作曲・編曲:tofubeats]
07. -turn-
08. でも[作詞・作曲・編曲:okadada]
09. P.S.[作詞:岩渕竜也 / 作曲:坪光成樹 / 編曲:高橋コースケ]
10. ひとりぼっちのラビリンス[作詞・作曲・編曲:tofubeats]
11. -taxi-
12. おいでよ[作詞・作曲・編曲:tofubeats]
13. Myかわいい日常たち[作詞・作曲・編曲:鴨田潤(イルリメ)]

2度のメンバーチェンジを果たしたヒップホップ・アイドル・ユニット、lyrical schoolのグループ名改称後の初となるアルバム。2013年9月18日発売。

国産ヒップホップリスナーと国内アイドルのリスナーの被り具合がSNSなどで明るみに出て(むしろ本人たちが出して?)久しいが、その二つの美味しいとこどり(?)とも言えるこのリリカル・スクールへの期待たるや凄まじいものだったのではないだろうか。

……とは言ったものの、僕自身彼女たちがまだtengal6名義のころの、タワレコ新宿店のインストアライブに行ったがそれはそれはひどいもので(というのもあぁいった駆け出しアイドルに付いてる“ファンの方々”にも衝撃を受けたが)音割れのするような、ライブでの使用に耐えられないスピーカーの分を差し引いても受け入れられるクォリティではなかった。

いわゆる日本のアイドルのノリについていけていないことも手伝って、まぁ名前が変わろうがメンバーが変わろうが取り敢えず頑張ってくださいな、程度のグループだった。

しかし今作のクレジットを見るとどうだろう。若手最有力のtofubeats(同い年です)を中心に(((さらうんど)))が絶好調のイルリメ、果てはAVのプロデュースをしていたポチョムキンすらも作家陣に名前を連ねている‼(以前からだけども、アルバムという曲数でこのクレジットを見るとやはり壮観)
何よりこのジャケットの素晴らしさ!(今年暫定1位!)

そしてアイドルらしからぬDVDすら付かない単品販売‼
結構音楽として勝負してるんじゃないの?と思いさくっと購入。

結果としてはだいぶ、いや予想を超える満足ぷりだった。

バースでメンバーが交互にかますラップは正直お粗末そのものだが(熱心なファンがこの拙い感じに興奮するのなら、そりゃ彼女たちに非の打ち所はなくなるね)、合唱形式のフックがどれも素晴らしい。
そこら辺はtofubeatsの童貞力(好き勝手に言ってすみません)がなせる業かと思うが、「『女の子の等身大の気持ちを表現した』と、思い込んでいる非モテの妄想の産物に過ぎない歌詞」という二重構造の歌詞がメルヘンでビートにハマってる。

あとアイドルポップというキャッチーでとっつきやすいジャンルも強いんだな、とつくづく実感。

ストーリー仕立てのアルバム構成もいいし、初っ端のM-2のフックにぶっ飛ばされたらノンストップで聞き通せる快作!
…ってことでさっそく今度のワンマンもお手並み拝見といきますか。。(←まんまとハマってる)





2013年10月8日火曜日

ウルヴァリン:SAMURAI

★★★★☆

「X-MEN」シリーズの人気キャラクターでヒュー・ジャックマンが演じるウルヴァリンを主人公とした「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」(2009)に続くシリーズ第2弾。カナダで隠遁生活を送っていたウルヴァリンは、ある因縁で結ばれた大物実業家・矢志田に請われて日本を訪れる。しかし、重病を患っていた矢志田はほどなくして死去。ウルヴァリンは矢志田の孫娘マリコと恋に落ちるが、何者かの陰謀により不死身の治癒能力を失うというかつてない状況に追い込まれる。日本が主な舞台となり、本格的な日本ロケも敢行された。マリコ役のTAO、ウルヴァリンを日本へと導くユキオ役の福島リラ、矢志田の息子シンゲンを演じる真田広之ら、日本人キャストも多数出演。監督は「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」「ナイト&デイ」のジェームズ・マンゴールド。(http://eiga.com/movie/77469/より)

そこそこのスケールで繰り広げられる、破天荒なストーリーはいい感じに誤解された日本像を交えながら最後まで訳分からん感じで終わる。正直最高だった。

惚れっぽすぎて足元をすくわれまくっている我らがウルヴァリンが、性懲りもなく一目惚れした女を守るために奮闘…といえば聞こえはいいが、上のビジュアルを観れば分かる通り、ヒーローというよりはいかついストーカーである。

前半に繰り広げられるYAKUZAとの戦闘シーンも、ウルヴァリンから治癒能力が奪われた後なので一般人とも多少苦戦していて、少しハラハラさせられる。
しかし水辺の多い神社(秋葉原が近いから神田明神?)でチャンバラするんだから、もっとなぎ倒されたYAKUZAを観ずに突き落としていたら受けが良かったのにーと思った。

しかしヒロインとウルヴァリンがアキバの街中をYAKUZAに追われて逃げるシーンはかなりシュール。
喪服の美人とハリウッドスターが銃で撃たれながら逃走する……日本の警察がここまで役立たずだとは情けない。
そのまま上野までダッシュして新幹線に乗り込むヒロインことマリコは、「安全な場所を知っているからもうあなたに守られなくても大丈夫」というのにお構いなしに新幹線に乗り込むストーカー(というか電車賃はどうした?!)。

その後展開される新幹線の屋上での戦闘も、前記事のマン・オブ・スティールのそれに比べるとスケールは100分の1未満だが、迫りくる電線を気にしながら戦う、妙に細かいところに気が行き届いた戦闘は爆笑必至。

序盤に真田広之がやっているハイパー剣道(そうとしか言いようがない)に始まり、その後もいたるところに細かいギャグが挟まれているが、ウィル・ユン・リーの絶望的な日本語と、福島リラの壊滅的な英語のバトル(※二人が劇中でからむことはない)もある意味見ものだ。庵野監督の演技力に感動するほど、世に出しちゃいかんレベルだ。

そして忘れちゃいかんのが次なる作品への布石!
当然あの二人が出てきて正直一番興奮した!
これ観るためだけに金払って劇場来たんだから、はじめの2時間あったヘンテコチャンバラ劇はおまけ!
すでに待ちきれないけれども、その前にX-MEN全部復習といきますか。

⇓原作本

2013年10月7日月曜日

マン・オブ・スティール

 
 
★★★
 
「ダークナイト」のクリストファー・ノーランが製作、「300 スリーハンドレッド」のザック・スナイダー監督のメガホンでリブートされた新たな「スーパーマン」。無敵の能力を備えながらも、それゆえに苦悩して育った青年クラーク・ケントが、いかにしてスーパーマンとして立ち上がったのか、これまで描かれてこなかったスーパーマン誕生の物語を描く。クラーク・ケント=スーパーマンに、新鋭ヘンリー・カビルを抜てき。育ての親ジョナサン・ケントにケビン・コスナー、生みの親ジョー=エルにラッセル・クロウ、ヒロインのロイス・レインにエイミー・アダムス、仇敵ゾッド将軍にマイケル・シャノンなど豪華キャストが集結。脚本に「ダークナイト」3部作のデビッド・S・ゴイヤー。音楽も「ダークナイト」や「インセプション」など、近年のノーラン作品を手がけているハンス・ジマーが担当。(http://eiga.com/movie/53194/より)
 
MARVELファンであるため(?)今までスーパーマンを観たことがなかった。
とかいってバットマンシリーズはティム・バートン版も観ているのだが。

 
『ウォッチメン』『エンジェル・ウォーズ』と「面白いはずなのに、なんだか微妙感が拭えない監督」の印象が強いザック監督だが、本作は面白い…はずなんだけどやっぱ微妙な作品だ。
 
まず個人的に好きな点を挙げると、
・バトルシーンはめちゃくちゃカッコいい
・育ての親がむちゃくちゃ立派で魅力的
・特にケビン・コスナーが素晴らしい(普通に主役超えでカッコいい)
くらいだ。3つだけかよ。
 
逆に嫌い…とまではいかないが微妙だなぁと思う点はかなりある。
ネタバレになってしまうのであまり言えないが、予告編からもわかる通り全体的にシリアスな空気が充満しており、そこに乗れるかどうかでかなり評価が分かれてしまう。
 
だってあのマント姿で真剣に会話を交わされても正直感情移入できない(超個人的意見)。
敵も味方も本気で会話を交わしている姿を見ると、ちょっとバカバカしく感じてしまう。
 
けれども観終えて劇場を出た後はとても満足していた。
後日観たウルヴァリンの衝撃が大き過ぎてこちらの印象がしぼんでしまったのが低評価の大きな要因だ。
 
しかし今後のシリーズ展開ではバットマンも出てくるとのことで、「ジャスティスリーグ」が我らがアヴェンジャーズを超えることができるのか、非常に楽しみではある。
 
このように金払って予告編を観る、という感覚はアメコミ作品では常識である。

2013年10月6日日曜日

クロニクル


★★★★☆

超能力を手にした高校生たちが、その力に翻弄されていく姿をドキュメンタリータッチで描いたSFアクション。平凡で退屈な日常生活を送る3人の高校生アンドリュー、マット、スティーブは、ある日、特殊な能力に目覚める。手を触れずに女子のスカートをめくったり、雲の上まで飛んでアメフトをしたり、3人は手に入れた力を使って刺激的な遊びに夢中になっていく。しかし、そんなある時、あおってきた後続車両にいら立ったアンドリューが力を使って事故にあわせたことから、3人は次第に自らの力に翻弄され、事態は予期せぬ方向へと発展していく。(http://eiga.com/movie/57805/より)

乙一がTwitterで「面白かった。超能力でスカートめくりしてた。」と言っていたのを見て「最高のおバカ童貞映画だっ‼」と思って観に行くと、モキュメンタリー形式で進むストーリーはバカ具合よりも緊迫感が勝っており、一括りに表現できない映画だ。

というのも主人公のアンドリューがいかにもなナード気質の少年なのだが、いわゆるスコットピルグリム的な「笑える/応援したくなるキャラ」というよりはいかにもイジメにあいそうな少年で、他のオタクを主役にした作品とは深刻度合がかなり違う。
アル中で職を追われた暴力家の父親と、重病で今にも死にそうな母親のもとで生活するアンドリューを見ていると、こっちまで気が滅入ってしまう。

そんな彼が学校のアメフトのスター選手と、唯一の友人(と言っても通学をともにしているだけだが)でいとこでもあるアレックスと超能力を手にするのだが、その後の超能力を「鍛えて」いくシーンは多少コメディ、青春色が強く、楽しんで観られるが(スカートめくりシーンもこの部分だ)、後半になるにつれて……あまり書くとネタバレになってしまうので控えておく。

ラストまでの展開が非常に物悲しく、安易な青春ムービーとは言えない。日本での宣伝文句も『みんな!エスパーだよ』などを引き合いに出しているがあのテンションを求めていくとギャップに驚くだろう」。

しかし「超能力×モキュメンタリー」の切り口は非常に斬新で撮影方法や超能力のアイデアは」とても新鮮で物語そのものよりもこちらにワクワクさせられた。

安直な青春ものではないが、忘れがたい一本になったことは間違いない。

2013年10月5日土曜日

きっと、うまくいく

★★★★★

インドで興行収入歴代ナンバーワンを記録する大ヒットとなったコメディドラマ。インド屈指のエリート理系大学ICEを舞台に、型破りな自由人のランチョー、機械よりも動物が大好きなファラン、なんでも神頼みの苦学生ラジューの3人が引き起こす騒動を描きながら、行方不明になったランチョーを探すミステリー仕立ての10年後の物語が同時進行で描かれる。(http://eiga.com/movie/77899/より)

にわかに注目を集めているインド映画だが、『ロボット』の印象が強く、破天荒かつ大味なイロモノ映画が多いのかと思っていたら、興行収入ナンバーワンを射止めた本作は直球なエンタメ作品。

160分という壮大な尺も一切だれることなく、腹がよじれるほど笑わせられたと思えば気付けば涙していたりと、感情のジェットコースターに乗せられたような最高の一本だ。

普通の映画作品であれば本作に出てくる挿話二三個でダラダラと二時間の映画を作るのだろうが、本作は過去を振り返る形式で学生時代のエピソードが主人公それぞれにスポットを当てたものから、本作の悪役である学園長(ホントは悪い人ではないんだが…)の家族にまつわる話まで、幅広く取り上げており、感情移入の度合いが他の映画の比ではない。
 
映像表現も難病をギャグとして映したり、時に登場人物がミュージカル風に歌い上げたりと観る者を飽きさせない工夫がなされている。

何より素晴らしいのが主人公であるランチョーのキャラだ。

成績・就職至上主義のエリート大学に「本来の学問のあり方」を問い続け、体制に屈することなく自らの信念を曲げずに学園長に立ち向かう姿勢はヒーローそのものだ(おまけに成績は大学トップなのだから恐れ入る)。

インドでも自殺が社会問題になっているようで、本作でも度々問題視される。

受験や進学、または就職に苦しみ、命を絶ってしまう極端なエリート社会のインドに、自殺大国である日本の病理を重ねて見てしまう人も多いのではないか。

ランチョーが周りの人間が困っている時に言うセリフ「アール・イズ・ウェル(All Is Well)」が邦題の由来だろう。

英語のタイトルが「3 idiots」のようだが邦題の方が本作を的確に表している。ただ単に3バカが大騒ぎする青春ムービーではないからだ。

この「アール・イズ・ウェル」が大活躍するエピソードが本作の最大の見せ場だろうか。

伏線が丁寧に張られた作品で、ラストに明らかになる、ある人物の真実もニヤリとすること間違いない。

2013年10月4日金曜日

Gotch 『the long goodbye』

★★★★

Side A. The Long Goodbye
Side B. The Long Goodbye (P's O-parts Remix) Remixed by PUNPEE

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル/ギター担当の後藤正文が愛称でもあるGotch名義でリリースした7インチシングル。ダウンロードコード付き。2013520日(レコードの日)発売。
CDというメディアすら億劫に感じている消費者が多い昨今、レコードの日という世界的なイベントにあわせてアナログオンリーで発売された本作は、アジカンの色そのままにミドルテンポの心地いいメロディが全編にわたって流れる。

サビの繊細な歌い回しも、いわゆる「アジカン節」というような青いエモさ全開というわけでこそないが『マジックディスク』~『ランドマーク』という傑作を経た円熟期を感じさせる。

一方聞き逃せないのがカップリングのPUNPEEのリミックスだ。

「アナログ」が抱える「不便性/モノの価値」というテーマにガッツリ合わせた内容で、普段のおちゃらけた雰囲気は残しつつも味わい深いリリックを披露してくれている。


「データは凄く 便利だけど


何も知らなきゃ空気の中さ

モノはとても 嵩張るけど

思い出させる匂いがあるんだ

僕たちの前の文明も

最後には全部データ処理になっちゃって

滅びたから結局最後何も残らずに消えたのかも」


この曲は「消えいくアナログレコード」をモチーフに「媒体が無くなっていっても、その文化や思いが無くなることはない」という内容になっているが、Daft Punkの音源売上の内訳を見ると、アナログの売上が結構な量を占めている。

かくいう僕も今までアナログプレイヤーを持っていなかったが、プレイヤーによってはデジタル音源への変換も可能なものがあるということで購入を検討している(というかレコードはもとからちょくちょく買い集めている……)。


「集めるならデカいジャケットの方が良い!」「CDよりも音質が良いっぽい!」というバカ丸出しの考えで買っているが、パンピーの説得力溢れる上記のバースに乗っかって、今後はアナログに鞍替えするかもしれない。

2013年10月3日木曜日

環ROY 『ラッキー』


 ★★★★☆

01. ワンダフル
02. Kids
03. そうそうきょく (Prod by 蓮沼執太)
04. 台風
05. little thing
06. VIEWER
07. 電車
08. いいやつ
09. date
10. 仲間
11. いまここ
12. YES (Prod by 蓮沼執太)


ROYの通算4枚目のフルアルバム。

“ムラ社会”と揶揄されるヒップホップシーンに向けて痛烈なメッセージを放ったセカンド、その反動もあってか日常生活を背景に普遍的なメッセージを落とし込んだサード、そして本作はそんなサードの世界観を引き続き継承しつつ、ビートとロイのラップをさらに進化させた傑作だ。

「リリック」よりも「歌詞」、「作詞」に拘っているとロイは常々語っているが、本作は前作の「ハッピーバースデー」で見せた、「何気ない日常の描写」と「普遍的なメッセージ」の織り交ぜを見事成功させた作品と言っていいだろう。

前作はキャッチーな歌詞の「ハッピーバースデー」ばかり聞いていて、ほかの曲は取っ付きづらかった印象があったが、今作『ラッキー』は作品全体の風通しが非常に良く、すんなりと聞き通せる。

作曲陣にはもはやロイの作品には欠かせない□□□の三浦をはじめ、お馴染みのメンツが並んでいるが、中でもART-SCHOOLのトディこと戸高が参加している「Little Thing」が新機軸といえる曲だ。
ギターロック~チルウェイヴを通過したような、一聴するとあまりラップに適したトラックには聞こえないのだが、ロイの緩急の付いた“聞かせる”巧みなラップが乗ると実に「ヒップホップ」なサウンドに聞こえるから不思議だ。

この記事を書くために過去作も聴き通してみたが、作品を重ねるごとにラップに柔軟性が増している。

セカンドを聞いたときあまりのラップの上手さに衝撃を受けたが(それ以前のコラボEP集にも驚いていたが)、完全に過去の作品になっていた。ライブで過去曲がどのようにアップデートされるのかも楽しみである。(※後日渋谷WWWのワンマンを見に行きました。最高!)

 

2013年10月2日水曜日

ブログ引越しのお知らせ

こんにちは。

以前のブログの最新更新が5カ月前……。
実はPCのメモ帳に下書きしては保存、下書きしては保存を繰り返して今に至っては下書きすらも辞めてしまった。という、たいへん情けない状態にあります。

しかし心機一転、新しい環境に(ネット上の)身を置くことで今年の怠惰っぷりを巻き返すことができたら、と思いここに新ブログを立ち上げました!

タイトルは「なんでも食べてアウトプットします!」という意気込みでつけていた「雑食」から、「偏ったものしか食べない(=偏食)」「ゆえに変な色を持った/趣味嗜好が変わり続ける(=変色)」というダブルミーニングを持った「ヘンショク食堂」に変えました。しかしやることは以前と一切変わりないと思います。

そんなこんなで、ふとした時に訪れてもらえるような、あるいは購入や鑑賞を迷ったものを検索したらここに辿り着いてとある決心が付くような、そんなブログにしていきたいと思います。

時間の許す限り、お付き合いいただければ幸いです。

海辺野日向

このブログについて

このブログでは普段僕が目/耳にしたもの(音楽、映画、本etc)の感想をつらつらと書いていきます。
作品のビジュアルの下に星が付いていますが、それが僕の「おすすめ度」だと思ってください。

5点満点で
☆⇒0.5点
★⇒1.0点
となっています。

ご覧の方はお分かりでしょうが僕の点数のハードルはかなり低く、満点寸前の作品が続出していますが、基本的に何でも好きになる人間ですので。。
あとわざわざ自分が嫌いなものを掲載するのもアレなので、という理由ですのでご勘弁を。。
(期待していた/話題になっていたアーティストの作品がそれほどだった、みたいな時は書くときもありますが、基本的に怒りに任せて書くつもりはありません、「怒っている」体でギャグ風に書くかもしれませんが)

そして宣言。今年はここで取り上げているジャンルに関しては年末ベストを必ず組みます。

具体的には今年発表された音楽、映画、本の超個人的ランキングを発表します。ということです。
宣言しないとやらなそうなので、この場を借りて逃げ道を断ちます。

拙い文文章が多くたいへん申し訳ありませんが、文章力向上のための場でもありますのでご容赦ください。

来てくださった方に少しでも楽しんでいただければ幸いです。