2014年2月18日火曜日

STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)
















★★★★

『CHAOS;HEAD』で描かれた、「ニュージェネレーションの狂気」による渋谷崩壊から1年後。秋葉原を拠点とする総勢3人の小さな発明サークル「未来ガジェット研究所」のリーダーである厨二病の大学生 岡部倫太郎は、研究所のメンバー(ラボメン)である橋田至や幼馴染でもある椎名まゆりと共に、日々ヘンテコな発明を繰り返していた。2010年7月28日、岡部は橋田と共に向かった講義会場で、弱冠17歳の天才少女、牧瀬紅莉栖と出会う。ところが、岡部はラジ館の8階奥で、血溜まりの中に倒れている紅莉栖を目撃し、そのことを橋田へ携帯メールで報告する。メールした直後、眩暈に襲われた岡部が我に返ると、ラジ館屋上には人工衛星らしきものが墜落しており、周辺は警察によって封鎖されていた。先ほど送信したはずのメールは、なぜか1週間前の日付で受信されており、周囲が話すここ最近の出来事と岡部の記憶の間には、齟齬が起こっていた。(Wikipediaより)

ここのところゲームをプレイする習慣はなかったが、以前から『かまいたちシリーズ』や『街』、『428』といったノベル形式のアドベンチャーゲームは結構好きでプレイしていた。いわゆる「ギャルゲー」になると『CLANNAD』(と、智代アフター)しかプレイしていないのだが、これらのゲームの特性である「ループ性」を、巧みに物語の中にも組み込ませている作品もあり、結構うならされたものだった。

こういったゲームを進めるにあたって必須ともいえる条件が、文庫本よろしくいつでもどこでも読み進められる=携帯ゲーム機でのプレイであると思う。テレビの画面に比べれば没入具合では劣るかもしれないが、会社勤めの身としてはサッと取り出せてプレイできることがやはりとても重要だ。ということで、本作もPS VITAでプレイした。

発明好きの大学生を主人公とする本作は巧みに貼られた伏線が回収されていく様が実に気持ちよく、ノベル好きだけでなくパズラー系のミステリ好きにもウケそうな内容だ。
とはいえ登場人物はやたら女性が多く、その上突飛な言動がイタい主人公に全員が多かれ少なかれ好意を抱いているというこの類のゲームにありがちな人間関係や、ライトノベル的な「身の回りのひょんな行動が世界の存亡に関わる」といった設定もテンプレ的で、序盤は抵抗を覚える人もいるかもしれない。しかし、本作は物語を動かす「素材」が非常に魅力的であるためあまり抵抗なく読み進められる。

「タイムマシン」や「アキバ文化」をふんだんに盛り込んだテキストとTipsは、そのジャンルに疎ければ疎いで興味深く読めるだろうし、散りばめられたジョジョネタも登場人物の会話にマッチしており、個人的には楽しめた(他にも様々な作品へのオマージュが込められているがそこら辺はネットで詳しく紹介している人がいる)。

序盤に言及した「ゲームのループ性を“物語の中そのもの”に組み込む形式」のものに本作もなっており、主人公の想いを追体験しながらストーリーを進めるため感情移入の度合もプレイ時間に比例して凄まじく上昇する。
はじめはオタクの内輪ノリに紛れ込んでしまったかのような居心地の悪い主人公たちの会話も、読み進めるにつれて不思議と愛おしくなっていく。激変する後半の物語の展開とのギャップが、親しい相手との何気ない会話が本来は掛け替えのないものであることを暗に示しているのだろう。

本作は小説によるサイドストーリーや劇場版アニメによるアフターストーリー、ドラマCDによる日常系のストーリーなどメディアミックスが非常に盛んなためそれらを掘っていくのもなかなか楽しい。
声優に疎い僕でも出演陣には「豪華だ!」と感じたし、「イタさ」まで表現している演技は逆に聞いている側が恥ずかしく感じなくていい。

iOSでも配信されているようなので気になるがゲーム機を買ってまで遊びたくない人はそちらでプレイしてもいいのかもしれない。

購入はこちらから。

2014年2月2日日曜日

ドラッグ・ウォー 毒戦




★★★☆

香港ノワールの巨匠ジョニー・トーの監督50作目で、中国公安警察の麻薬捜査官がアジアをまたにかけた巨大麻薬組織の壊滅に挑む姿を描いたサスペンスアクション。中国・津海にあるコカイン製造工場で爆発が発生し、現場から逃走した車が衝突事故を起こす。車を運転していた香港出身のテンミンという男が病院に担ぎ込まれるが、麻薬捜査官のジャン警部は、テンミンが麻薬組織に大きなかかわりを持っていると察する。麻薬密造には死刑判決が下るため、減刑と引き換えでテンミンに捜査協力を要請したジャン警部は、テンミンの情報をもとに潜入捜査を開始。すると、中国全土だけでなく韓国や日本にまで勢力を拡大する麻薬シンジゲートと、その巨大組織を裏で操る「香港の7人衆」の存在が浮かび上がる。

106分ノンストップで続く、追う側と追われる側の銃撃戦三昧。

冒頭の薬の運び屋の一斉検挙のシーンで警察側のキャラクターが怒涛の勢いで紹介されるが、それぞれの役割が明確なのでスッと頭に入ってくる。非常に鮮やかだ。

ホテルでのハラハラとする潜入捜査の一連の流れや、売人側の異常な戦闘能力の高さなどどのシーンもクライマックス級の盛り上がりで見ごたえがあった。

ジョニー・トー作品は近年ものしか観ていないが、本作は緊迫したシーンでも思わず笑ってしまうシュールな絵作りが多い。
序盤で死刑が確定している運び屋たちがコンドームに入れて飲み込んだ覚せい剤を桶にひりだそうとしているシーンは、老若男女が情けない姿で力んでいるさまを淡々と写している。

その“シュールさ”の集大成とも言えるのが終盤のある場所での銃撃戦で、普段その場所に流れている穏やかな空気が主人公たちによってぶっ壊されていく様子が、状況の凄惨さをさらに際立たせていて最早えぐい。

アクションもサスペンスもふんだんに盛り込まれていて本当に退屈しない映画だ。
あまり大きなどんでん返しなどはないが、退屈しのぎにはなるのでは。

2014年2月1日土曜日

THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!

 
 
★★★★☆
 
プレイヤーがプロデューサーとなってアイドルを育成する人気ゲームをアニメーション化し、2011年にテレビ放送された「アイドルマスター」の劇場版。脚本を新たに書き下ろした劇場版オリジナルストーリーで、芸能事務所765プロダクションに所属し、新米プロデューサーとともにトップアイドルを目指す少女たちが、アリーナライブに向けて合宿に励む日々を描く。監督・キャラクターデザイン・総作画監督の錦織敦史、脚本の高橋龍也、アニメーション制作のA-1 Picturesをはじめ、メインスタッフ、キャストともテレビシリーズから続投。http://eiga.com/movie/79111/より)
 
ドラマとアニメの映画化は、本来の映画ファンからはあまり良い印象を持たれない。
単純な一本の映像作品として観られる設定のものがあまりに少ないからだろう。その意味ではこれらは―昨年大ヒットを飛ばした「まどマギ」の新作しかり―ファンがこれまでのTV放送やその他メディアで体感してきた“文脈”を映画館という箱に集約させ、感動を共有する“場づくり”に、お金を払っていると言った方が近いのかもしれない。
 
だからアニメ作品の劇場版は0時解禁の上映が非常に盛り上がるのだろう。
 
今回取り上げている本作も、様々な文脈を集約させて、ファンに感動を与えている涙腺爆撃コンテンツだ。
世間からは問題視されている課金制の携帯ゲームに出てくるアイドルを新キャラとして投入したり、劇中のクライマックスの横浜アリーナでのライブシーンは、念願かなって実現した同場所での“中の人”たちのコンサートを彷彿とさせたり、TVアニメではまだまだ成長途中だったアイドルたちが、今作ではチームの一員としての自分の立ち位置を理解し、それぞれの役割を担っているという成長した一面だったり、このコンテンツを愛している人なら油断するとギャグシーンでも涙が出てきてしまうんじゃないかというくらい過剰に仕掛けが置かれている。

そんな765PROの成長しきった姿を観られる一方で、各キャラが大きくストーリーに絡んでくることは残念ながら少ない。今作は天海春香がリーダーとしてバックダンサーを交えて行う初のアリーナライブを、様々な問題点がある中でどのように着地させるかが最大の胆となる。

春香が抱くあるバックダンサーへの情とも捉えられてしまう感情に、怒り(そして焦り)をあらわにしてしまうダンサーもいるが、この流れに関してはアニメの終盤の状況の既視感をぬぐえない。
しかし、今回誰よりも悩んでいるのは新キャラたちであり、自分たちが通った道であることを自覚してフォローに回る765のメンツが非常に頼もしい。

話し、ぶつかり、泣き、向き合い、次のステップへ行く。
言ってしまえば話の流れは王道のスポ根青春ものだが、「アイドル=プロ」の意識のもと行動する彼女たちの姿は非常に眩しい。ライブシーンはもっとボリューミーにして欲しかったが、それを補って余りある人間ドラマを観ることができた。

というわけで、週替わり来場特典コンプリート目指して、毎週映画館に通います。