★★★★
インドネシア発のバイオレンスアクションとして話題となった「ザ・レイド」の続編で、今作では、警察と政界支配を目論むアジアンマフィア、そして勢力拡大を狙う日本のヤクザの三つ巴の戦いを描く。上層部の命令を受け、潜入捜査官として生きることになった新人警官のラマは、名前を偽り、マフィアのボスの息子
ウチョの信頼を得て組織の一員になる。しかし、父親に反発するウチョが組織内で成り上ろうと企てた陰謀により、ラマは対立する日本人ヤクザとの抗争や果てしない戦いに巻き込まれていく。監督は前作に引き続き、イギリス出身でアジアを拠点とするギャレス・エバンス。松田龍平、遠藤憲一、北村一輝らが日本人ヤ
クザとして出演。(http://eiga.com/movie/78171/より)
前作がヤクザマンションで繰り広げられるクローズド・アクションもので上映時間105分というシンプルな構成だったのに対し、今作はなんと上映時間は146分。これだけで作品の方向性がかなり違うだろうなと感じていたが予想以上に別物の映画となっていて驚いた。
まず今作は序盤の導入が長い。具体的には主人公が潜入捜査官になりマフィアのドラ息子に取り入るまでの流れだが、上記のあらすじを読んでおけば始めの30分は寝ていてもOK、といった感じだ。
一方でアクションはかなり多彩になっており、主人公も潜入捜査官=表向きはマフィアの用心棒なのを良いことに襲ってくる敵はほとんど殺してしまってる。
前作の「誰が死ぬのか分からない」緊張感も捨てがたいが、今作の街中でのバトルも相当に面白い。カメラアクションが秀逸で一瞬どのアングルで撮られているのか分からないシーンが多いのだが、これは吹っ飛ばされた人が「自分がどこにいるのか」を分からない様を上手く表現している。
そして最高なのが物語後半のカーチェイスシーン。ありとあらゆるアイデアで、出てくる人物全員が徹底的に痛めつけられており、もはやギャグとなっているが人間の発想力の素晴らしさたるや! といった内容。
敵陣営もバットとボールでノックの容量で人を殺す背の低い男や、鋭利なハンマーで殴っては切り裂く聾唖の女、と一昔前のマンガみたいな設定のキャラが平気で出てくるが、画づくりの説得力で見る側は納得してしまうのもこの映画の魅力。
ただ正直このシリーズに脚本を求めているかと言われると1ミリも求めていなく、凝ろうとしているのは分かるが相当面白くない+分かりづらかった。
日本からの俳優もスポンサー枠感が尋常じゃなく、ミスリードな邦題も最悪。
次があるのならヤクザの徹底参戦+原点回帰のクローズドアクションを楽しみたいけど……この条件を満たすとなると『殺し屋1』の実写化になってしまう!!
2014年11月24日月曜日
2014年4月12日土曜日
それでも夜は明ける
★★★★
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。(http://eiga.com/movie/79401/より)
黒人奴隷の映画、ということで週末に娯楽を求めて観るものでは当然ないとは頭では分かっていたが、やはり特定の人種や民族が虐げられる映画を観るのはしんどい……(タランティーノの『ジャンゴ』ですらもキツかった)。
黒人の奴隷の歴史に関してはほとんど無知だが、時代が時代ならこうも人は残酷になれるのかという部分をまざまざと見せられる。とは言ったものの、今もYahoo!ニュースのコメント欄や匿名掲示板で特定の人種へのヘイトは脈々と続いている。人間の営みの暗部なのだろう。
映画としては奴隷として売られた主人公がひたすら絶望的な目に遭う挿話がこれでもかと盛り込まれており、感動というよりはやりきれない気持ちが涙を誘う。
出資者としても名を連ねるブラッド・ピットは、「彼がプロデュースを名乗り出なかったら本作の制作はかなわなかった」と言わしめるくらいの功労者なので、当然ながらハンパなくいい役で出演している。
彼の登場が物語のターニングポイントなのだが、正直唐突過ぎる印象はあった。
…なんだかえらく淡白な感想になってしまったが、一つひとつの挿話は衝撃的なのだが物語の終わり方にもタイトルのような希望を抱くことも難しい、ひたすら心に重く残る一本。
2013年10月14日月曜日
SNEEEZE 『ASYMMETRY』
★★★★
01. Intro (Pro.SNEEEZE)
02. Goodbye Bitch (Pro.CHRIS GR3EN)
03. I Go (Pro.TND)
04. S.G.H (Pro.The Beatzz)
05. Money Or Love (Pro.774 for DIGITAL NINJA RECORDS)
06. Dramatic (Pro.TDC)
07. Change (Pro.Jay Beatz)
08. Whale (Pro.Jay Beatz)
09. Say So (Pro.TND)
10. Skit -Wave- (Pro.SNEEEZE)
11. I'm In Night (Pro.PUNPEE)
12. Crying (Pro.Keybord Kid)
13. Outro (Pro.SNEEEZE)
ネット上で作品を発表し、一躍有名になった神戸のラッパー、SNEEEZEの初フィジカル作品。
2013年4月17日発売。
アルバム発売前から配信されていたM-2の出来栄えからアルバムの期待値は上がっていたが、リリースされた本作も期待を裏切ることのない作品だった。
スニーズは以前ネット上に発表していた作品はどちらかというとスケールの大きいテーマでラップしていた印象が強いが、本作はリリース直前にMVが発表されたM-9などからもわかるように身の回りの、特に恋愛をテーマにしたナイーブな曲が多い。地に足の着いた、というと語弊があるが聞く側も感情移入しやすく、彼の持ち味であるスムースなフロウも相まってサクッと聞きとおせる。
彼のフロウは一聴するとメロディアスだが、現行のUSの流れを汲んだ“抜き”が絶妙で日本語を崩さずに本場使用で歌い上げる技術、先人だとSIMON、同世代だとSALUなどがいるが彼らを凌駕していると個人的には思う。
どの曲も情景描写が巧みでM-2のサビのドラマティックさといったらない。
面倒くさがって別れた「Bitch」への解放感と未練が交差する矛盾した、しかし人間くさい内面を巧みに描いたバース部分も聞き逃せない。
一方で従来の「現状打破」系の曲であるM-3や7、未来を見据えた視点を深海を進むクジラにたとえたM-8も配信の時よりもスムースになったフロウを堪能できる。
本作は客演がいなかったが、セカンド以降は他のラッパーとのがあるのか、今後も期待したところだ。
M-7 “Say So”
M-2 “Good^bye Bitch”
01. Intro (Pro.SNEEEZE)
02. Goodbye Bitch (Pro.CHRIS GR3EN)
03. I Go (Pro.TND)
04. S.G.H (Pro.The Beatzz)
05. Money Or Love (Pro.774 for DIGITAL NINJA RECORDS)
06. Dramatic (Pro.TDC)
07. Change (Pro.Jay Beatz)
08. Whale (Pro.Jay Beatz)
09. Say So (Pro.TND)
10. Skit -Wave- (Pro.SNEEEZE)
11. I'm In Night (Pro.PUNPEE)
12. Crying (Pro.Keybord Kid)
13. Outro (Pro.SNEEEZE)
ネット上で作品を発表し、一躍有名になった神戸のラッパー、SNEEEZEの初フィジカル作品。
2013年4月17日発売。
アルバム発売前から配信されていたM-2の出来栄えからアルバムの期待値は上がっていたが、リリースされた本作も期待を裏切ることのない作品だった。
スニーズは以前ネット上に発表していた作品はどちらかというとスケールの大きいテーマでラップしていた印象が強いが、本作はリリース直前にMVが発表されたM-9などからもわかるように身の回りの、特に恋愛をテーマにしたナイーブな曲が多い。地に足の着いた、というと語弊があるが聞く側も感情移入しやすく、彼の持ち味であるスムースなフロウも相まってサクッと聞きとおせる。
彼のフロウは一聴するとメロディアスだが、現行のUSの流れを汲んだ“抜き”が絶妙で日本語を崩さずに本場使用で歌い上げる技術、先人だとSIMON、同世代だとSALUなどがいるが彼らを凌駕していると個人的には思う。
どの曲も情景描写が巧みでM-2のサビのドラマティックさといったらない。
面倒くさがって別れた「Bitch」への解放感と未練が交差する矛盾した、しかし人間くさい内面を巧みに描いたバース部分も聞き逃せない。
一方で従来の「現状打破」系の曲であるM-3や7、未来を見据えた視点を深海を進むクジラにたとえたM-8も配信の時よりもスムースになったフロウを堪能できる。
本作は客演がいなかったが、セカンド以降は他のラッパーとのがあるのか、今後も期待したところだ。
M-7 “Say So”
M-2 “Good^bye Bitch”
2013年10月9日水曜日
lyrical school 『date course』
★★★★
01. -drive-
02. そりゃ夏だ![作詞・作曲・編曲:tofubeats]
03. wow♪[作詞:ポチョムキン(from餓鬼レンジャー)/ 作・編曲:Fragment]
04. リボンをきゅっと[作詞・作曲・編曲:tofubeats]
05. 流れる時のように[作詞:呂布 / 作・編曲:ハシダカズマ(箱庭の室内楽)]
06. PARADE[作詞・作曲・編曲:tofubeats]
07. -turn-
08. でも[作詞・作曲・編曲:okadada]
09. P.S.[作詞:岩渕竜也 / 作曲:坪光成樹 / 編曲:高橋コースケ]
10. ひとりぼっちのラビリンス[作詞・作曲・編曲:tofubeats]
11. -taxi-
12. おいでよ[作詞・作曲・編曲:tofubeats]
13. Myかわいい日常たち[作詞・作曲・編曲:鴨田潤(イルリメ)]
2度のメンバーチェンジを果たしたヒップホップ・アイドル・ユニット、lyrical schoolのグループ名改称後の初となるアルバム。2013年9月18日発売。
国産ヒップホップリスナーと国内アイドルのリスナーの被り具合がSNSなどで明るみに出て(むしろ本人たちが出して?)久しいが、その二つの美味しいとこどり(?)とも言えるこのリリカル・スクールへの期待たるや凄まじいものだったのではないだろうか。
……とは言ったものの、僕自身彼女たちがまだtengal6名義のころの、タワレコ新宿店のインストアライブに行ったがそれはそれはひどいもので(というのもあぁいった駆け出しアイドルに付いてる“ファンの方々”にも衝撃を受けたが)音割れのするような、ライブでの使用に耐えられないスピーカーの分を差し引いても受け入れられるクォリティではなかった。
いわゆる日本のアイドルのノリについていけていないことも手伝って、まぁ名前が変わろうがメンバーが変わろうが取り敢えず頑張ってくださいな、程度のグループだった。
しかし今作のクレジットを見るとどうだろう。若手最有力のtofubeats(同い年です)を中心に(((さらうんど)))が絶好調のイルリメ、果てはAVのプロデュースをしていたポチョムキンすらも作家陣に名前を連ねている‼(以前からだけども、アルバムという曲数でこのクレジットを見るとやはり壮観)
何よりこのジャケットの素晴らしさ!(今年暫定1位!)
そしてアイドルらしからぬDVDすら付かない単品販売‼
結構音楽として勝負してるんじゃないの?と思いさくっと購入。
結果としてはだいぶ、いや予想を超える満足ぷりだった。
バースでメンバーが交互にかますラップは正直お粗末そのものだが(熱心なファンがこの拙い感じに興奮するのなら、そりゃ彼女たちに非の打ち所はなくなるね)、合唱形式のフックがどれも素晴らしい。
そこら辺はtofubeatsの童貞力(好き勝手に言ってすみません)がなせる業かと思うが、「『女の子の等身大の気持ちを表現した』と、思い込んでいる非モテの妄想の産物に過ぎない歌詞」という二重構造の歌詞がメルヘンでビートにハマってる。
あとアイドルポップというキャッチーでとっつきやすいジャンルも強いんだな、とつくづく実感。
ストーリー仕立てのアルバム構成もいいし、初っ端のM-2のフックにぶっ飛ばされたらノンストップで聞き通せる快作!
…ってことでさっそく今度のワンマンもお手並み拝見といきますか。。(←まんまとハマってる)
ラベル:
★★★★,
HIPHOP,
J-POP,
JAPANESE HIPHOP,
lyrical school,
MUSIC,
RAP,
アイドル,
感想,
日本語ラップ
2013年10月4日金曜日
Gotch 『the long goodbye』
★★★★
Side A. The Long Goodbye
Side B. The Long Goodbye (P's O-parts Remix) Remixed by PUNPEE
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル/ギター担当の後藤正文が愛称でもあるGotch名義でリリースした7インチシングル。ダウンロードコード付き。2013年5月20日(レコードの日)発売。
CDというメディアすら億劫に感じている消費者が多い昨今、レコードの日という世界的なイベントにあわせてアナログオンリーで発売された本作は、アジカンの色そのままにミドルテンポの心地いいメロディが全編にわたって流れる。
サビの繊細な歌い回しも、いわゆる「アジカン節」というような青いエモさ全開というわけでこそないが『マジックディスク』~『ランドマーク』という傑作を経た円熟期を感じさせる。
一方聞き逃せないのがカップリングのPUNPEEのリミックスだ。
「アナログ」が抱える「不便性/モノの価値」というテーマにガッツリ合わせた内容で、普段のおちゃらけた雰囲気は残しつつも味わい深いリリックを披露してくれている。
何も知らなきゃ空気の中さ
モノはとても 嵩張るけど
僕たちの前の文明も
滅びたから結局最後何も残らずに消えたのかも」
この曲は「消えいくアナログレコード」をモチーフに「媒体が無くなっていっても、その文化や思いが無くなることはない」という内容になっているが、Daft Punkの音源売上の内訳を見ると、アナログの売上が結構な量を占めている。
「集めるならデカいジャケットの方が良い!」「CDよりも音質が良いっぽい!」というバカ丸出しの考えで買っているが、パンピーの説得力溢れる上記のバースに乗っかって、今後はアナログに鞍替えするかもしれない。
Side A. The Long Goodbye
Side B. The Long Goodbye (P's O-parts Remix) Remixed by PUNPEE
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル/ギター担当の後藤正文が愛称でもあるGotch名義でリリースした7インチシングル。ダウンロードコード付き。2013年5月20日(レコードの日)発売。
CDというメディアすら億劫に感じている消費者が多い昨今、レコードの日という世界的なイベントにあわせてアナログオンリーで発売された本作は、アジカンの色そのままにミドルテンポの心地いいメロディが全編にわたって流れる。
サビの繊細な歌い回しも、いわゆる「アジカン節」というような青いエモさ全開というわけでこそないが『マジックディスク』~『ランドマーク』という傑作を経た円熟期を感じさせる。
一方聞き逃せないのがカップリングのPUNPEEのリミックスだ。
「アナログ」が抱える「不便性/モノの価値」というテーマにガッツリ合わせた内容で、普段のおちゃらけた雰囲気は残しつつも味わい深いリリックを披露してくれている。
「データは凄く 便利だけど
何も知らなきゃ空気の中さ
モノはとても 嵩張るけど
思い出させる匂いがあるんだ
僕たちの前の文明も
最後には全部データ処理になっちゃって
滅びたから結局最後何も残らずに消えたのかも」
この曲は「消えいくアナログレコード」をモチーフに「媒体が無くなっていっても、その文化や思いが無くなることはない」という内容になっているが、Daft Punkの音源売上の内訳を見ると、アナログの売上が結構な量を占めている。
かくいう僕も今までアナログプレイヤーを持っていなかったが、プレイヤーによってはデジタル音源への変換も可能なものがあるということで購入を検討している(というかレコードはもとからちょくちょく買い集めている……)。
「集めるならデカいジャケットの方が良い!」「CDよりも音質が良いっぽい!」というバカ丸出しの考えで買っているが、パンピーの説得力溢れる上記のバースに乗っかって、今後はアナログに鞍替えするかもしれない。
登録:
投稿 (Atom)